第1章 始まりのはじまり
ピンポーン♪
「すみませーん」
ピンポーン♪
「万事屋の銀ちゃんでーす」
ピンポーン♪
「・・・・・・。よし。」
従業員用出入り口の呼び鈴を3回ならしても応答のない扉を見上げて短く息吐いた。
「銀さんちゃんと鳴らしたからね!入りますよー!お邪魔しますよー」
なんのルールなのか、もはや誰にも突っ込まれずに銀時は不法侵入を正当化して依頼宅に足を踏み入れた。
「あれ~?おっかしーな~?誰もいませんか~?万事屋銀ちゃんどぇーす!」
シーン。。。
夕焼け色に染まる池や形よく切られた木々をかき分けて石畳を渡り、小さなドアに手をかけるとカラカラと音をてて扉が開いた。
「―――――ッ!?」
銀時は目の前の現実に思わず息を飲んだ。
鼻を突く異臭。
嫌というほど身体が覚えてる匂い。
「ひでぇな、こりゃ…」
つい数時間前までせっせと敷地内を駆け回っていた女中や家の者が、真っ赤な体液を撒き散らしてそこに転がっていた。
「噂は本当だったのか?」
行きつけの居酒屋でたまたま耳にした噂を思い返す。
―あのでっけェで屋敷、裏稼業で売春してるらしいぜぇ?
―そういや、あそこンちの一人娘って見たことねぇな。
―実の娘を商売道具にしてるって話だぜ?
―いやぁ~怖い怖い。
銀時はほんの好奇心だった。
その屋敷から依頼が来た時は運命だと思った。
「しかし、売春と目の前の惨劇に何の関係が?」
立ち止まっていても仕方がないと歩を進めた。
死体を見るとどれも刀で切られた傷なのが分かった。
首のないもの。四肢の欠けたもの。一つとして“綺麗な死体”はなかった。
ドオオォォォォォン!!!
突然の爆発音に思わず歩を止める。
(おいおい、一体何が起きてるってんだ?)
余計な首を突っ込んだ後悔を短いため息と一緒に吐き出した。
ただ気になるのは例の女の安否だった。
「毒を食らわば皿まで…だな」
再び歩き出そうとした銀時だったが――。
キャァァァァアアア!!!!!!
耳を劈く悲鳴が奮い立たせた。
そして思考が動く前に足が床を蹴り上げていた。