第4章 真選組のしごと(後編)
それ程、この二人は因縁めいた何かがあるのだろうと、寂しさにも似た感情が胸を掠め、すぐに振り払った。
山「名前ちゃんは?大丈夫?!」
『はい。大丈夫です。んまぁ、刀傷はいくつかありますけどどれも擦り傷ですし、顔にも怪我はしてませんよ?でも着物汚れちゃったなぁ』
パンパンと裾を叩くと誇りがキラキラと舞った。
『実践があるならもっと身軽な格好でくれば良かった』
沖「でもまぁ、その格好でココまで動けるなら合格でさァ。なぁ土方さん?」
チッと舌打ちが響くだけで言葉が紡がれることはなかった。
『私、テストされたの?』
ニヤっと笑った沖田が窓からのぞき込む明かりに照らされる。
沖「物の例えでさァ」
駆けつけた隊士達に現場を任せて、山崎の運転する車に名前は助手席に、後部座席に沖田と土方が並んで乗り込み屯所へ向かった。
『じゃぁ、元々あの倉庫は攘夷浪士達の潜伏場所だったの?』
事情を聞かされた名前は目を丸くした。
土「あぁ。総悟が浪士と街中でやりあったのが1月頃だったか。それからあの倉庫を拠点にしてたのを突き止めたのが2週間後。そいつらを一斉検挙したのが先月だ。生き残りが居たのは知ってたが、今日、あそこで俺等が密談するなんて誤情報を流してたのは知らなかった」
『私のテストと敵を一網打尽に出来るチャンスだと思ったたんだね、沖田さんは』
いや~すいやせん。と言葉では謝罪をするが、全く悪びれる様子はない。
沖「んま、これでアンタの強さが証明されたんでさァ。しかし化物みたいに強ぇや」
『ただの護身術よ…』
名前は閉められた窓枠に肘をついて外を見やる。
土方は目を細めた。
土(コイツはどれだけ“護身術”を身につけてんだ)
底の見えない名前の闇を感じてしまった土方は、その深さを知りたくなった。
それは単なる興味なのか、はたまた別の感情なのか。
未だ誰も知らない。