第4章 真選組のしごと(後編)
へっ。と笑った浪士が後悔するのは早かった。
名前は冷たい目で右手を天へ伸ばし、視線は男を捉えたまま柄を掴むとそのままの勢いで男に振り下ろしたのだった。
ザシュ―
頭部から派手な血飛沫上がり名前の身体中を汚す。
『あの世で後悔しな』
そのままクルリと刀を体重に乗せて半回転すると、無防備と思った背中を狙った2人の浪士の腹をカッ捌いた。
血の匂いが鼻をつく。
開きっぱなしの瞳孔に血が吹きかかろうと、名前は剣を振る手を止めなかった。
パトカーがサイレンを鳴らせて倉庫の前で急停止して出入り口を塞いだ。
山「ふくちょおおおおぉぉぉっ!!!!」
山崎が門を潜ると地獄絵図だった。
床はもちろん壁や窓ガラスが鮮血に染まり、死臭が立ち込めていた。
屍の山に3人の陰が目に入り駆けつけた隊士達が思わず息を飲んだ。
シュポッ
薄暗い部屋に火が灯る。
それが土方のライターの火であることはすぐに分かった。
中央に置いてあった長机に腰を下ろした土方がふぅーと煙るを吐き出すと、それに続いて沖田と名前もドカッと腰を下ろした。
『流石につかれました…』
沖「はぁ。あれだけやりゃぁ上等でィ」
『あれ?沖田さんも息が上がってるんじゃない?』
沖「ははっ。土方コノヤローがちっとも動かねぇから、その分俺が殺ったんでぃ」
土「てめーは何ぬけぬけとホラ吹いてやがんだ!総悟の方が俺の足ひっぱってただろうが!」
沖「そんなことねェですぜェ?俺の足3回も踏んだくせに」
土「違ぇよ!2回だッ!」
『あ、1回は私かも。何なら土方さんの背中にぶつかったのも私かも…』
土「アレお前だったのか!俺はてっきり総悟かと…」
沖「やだなぁ。いつも俺のせいにしねェで下せぇよー」
土「普段の行いが悪いからだ!」
ケタケタと名前は笑った。
そんな3人に山崎がそっと歩み寄る。
山「怪我はないですか?」
返り血なのか自身の血なのか判断できなくて一応伺う。
土沖「ねぇよ」
『嘘つけっ!沖田さんは太もも、土方さんは二の腕を少し切られてますよー』
思わず2人は言い当てられた箇所をギュッと抑えた。
恐らく、傷を負ったとなれば弄られるとお互いが意地を張ったのだろう。と名前は考えた。