第3章 真選組のしごと(前編)
『わぁ!ここの雑貨屋さん可愛い!!あ、このお店は何?あっちはご飯屋さん?美味しいの?』
名前は見る物全てに目をキラキラさせてテンションはいつもの5割増になっていた。
土方も見慣れた江戸の町。
だが名前はどれも初めて見るものばかりだった。
土「お前の仕事は見回りじゃないが、自分が住んでる街くらい知っておかねーと不便だからな」
隊服に刀をぶら下げた土方の手には相変わらずの煙草。
『家に出入りしてた人からしか聞いたことなかったけど、こんなに大きい建物だったんだね~』
土(ホントに家から出たことねぇのか…)
ハッと見ると隣を歩いてはずの名前の姿がない。
振り返ると茶屋のオヤジと楽しげに離していた。
土「おいコラ!ちゃんと着いて来ないとはぐれるぞ!」
『あ、ごめん!おじさんが試食くれるって言うから、つい。おばチャンもよくここに来るんですか?』
と縁側に座って茶をすする客にまで話しかける始末。
土「世間話もいいが日が暮れるぞ?」
『あ、そっか!ごめん!…また今度寄りますね~』
と店主と客に手を振って再び歩き出した。
街の案内を兼ねた見回りをすること3時間。
途中でお昼休憩を挟んだが、名前に疲れの色が見えないことに土方は内心驚いていた。
『・・・・・・』
土「?…どうした?」
名前は突然キョロキョロと周りを見渡した。
『喧嘩…?』
土「何が聞こえるんだ?」
『罵声?怒声?3人くらいかな?』
土「どっちだ?」
『んっと...こっち、かな?』
と、名前が指をさした瞬間だった。
ドォォォォォォォォン!!!
低い爆発音が鳴り響き、少しして悲鳴にも似た声が聞こえた。
土「っち!テロか!?」
『煙の量からして規模は小さいかと思います!悲鳴も大きくないので!』
土「名前お前はココに、っておい!」
既に名前は前方へと走り出していた。