第3章 真選組のしごと(前編)
女性が障子を開けると照れ笑いする名前と目が合い、土方は咥えていた煙草をポロリと落とした。
『お、お待たせして…すみま…せん』
山「わぁ!名前ちゃん可愛いですね!!やっぱり仕立てて頂いてよかったですね!ね!副長!……副ちょガフッ!!」
土方に腹パンを食らった山崎がその場に崩れた。
山「な…なんで…」
チーン
合掌。。。
「それではわたくし達はこれで失礼させて頂きます!他の服は仕上がりましたらお届けに伺いますので~」
と足早に部屋を出て行ってしまった。
『土方さん?』
土「あ、あぁ…」
(土方さん、なんか上の空…。そんなに似合わなかったかなぁ)
ゴシゴシゴシゴシゴシ…
空気に耐えられなくなった名前は手の甲で紅を拭ってしまう。
土「ちょ!なにやってんだ!」
『化粧なんて、私には似合わない…』
土「そんなことねぇって!」
『いーの!監察だし、目立つのも良くないでしょ!』
土(言えねェ!見とれてて声かけられなかったなんて言えねぇよ!!)
『とりあえず…』
名前は土方が落とした煙草を拾い上げて『はい』と渡す。
『色々と気を使っていただいて…ありがと…ござい、ました』
少し頬を赤らめている名前に気づいたのか、土方も照れくさそうに笑った。
土「なんだかんだでお前ェも照れてんのか?」
『違っ!!…ん?お前ェ“も”?』
一瞬、名前以上に顔を赤らめた土方は、受け取った煙草を咥え直してクルリと半回転して顔を隠してしまった。
山「ぅう…あれ?副長?俺気絶して…ゲフッ」
すると今度は、意識が戻りかけた山崎の腹を踏みつけて歩き出す。
『や、山崎さんっ!』
山崎の意識は再び闇に引き戻された。
土「い、行くぞ名前!次は見回りだ!遅れるなよ!!」
『あ、山崎さんは!?』
土「知るか!放っとけっ!!」
口調は乱暴だが、名前の耳には土方が怒って言ってるのではない事が分かっているから
(山崎さん、ごめんなさいね)
と心の中で合掌するのであった。