第2章 最初のいっぽ
病院を出られたのはお昼を少し過ぎた頃だった。
『あのまま一人でやってたら夕方になってるところだったわぁ』
小さな風呂敷を持った名前が、銀時と土方に挟まれて江戸の町を歩き出していた。
大きな荷物は二人の手にあった。
土「お前、この量の荷物を一人で持って屯所まで行くつもりだったのか?」
『まぁ、屯所までの地図は山崎さんから貰ってたから、頑張れば一人でいけるかなーっと』
銀「楽観的っつーか脳天気っつーか、名前って肝据わりすぎじゃね?」
『いやぁ、そんなことないよ』
どこか翳りのある笑みを二人は見逃さない。
少し前を歩いていた名前は見えなかったが、土方が銀髪の頭を小突いて声を潜めた。
土「あんまり浮かれたことしてんじゃねぇぞ!」
銀「場を盛り上げようとしただけじゃんか!だったらテメェがやってみやがれ!」
ちっと舌打ちして煙草を取り出した。
火を付けようとした時―。
『お腹…空いた……』
同時に名前の腹の虫が鳴いた。
土「そうだな。あの角を曲がったところに行き付けの飯屋があるんだ。食ってくか?」
銀「え?マジで!?じゃぁご馳走になるわ!!」
土「誰もテメェを誘ってねぇよ!テメェの分はテメェで出せ!」
銀「え~ケチ~!」
土「ケチじゃねぇよ!てめぇの分を奢る義理はねェっつってんだ!」
『まぁまぁ!二人共、こんな公衆の面前で喧嘩しないで』
自分を挟んで喧々囂々とする二人を仲裁する名前は、怒っているのかと思いきや、その表情はどこか楽しげに見えた。
いつか、心の底から笑う日がくるのだろうか。
銀時と土方は同時に思うのだった。