第2章 最初のいっぽ
翌朝。
隊服をキッチリ着こなす土方とは対照的に、着物を着崩した銀時。
二人の姿は名前の病室にあった。
『あ、おはようございます』
薄墨位のくせ毛は綺麗は解かされ、橙色の着物を着こなす名前に2人は目を丸くしていた。
『私が目を覚ました時にいらっしゃった方ですよね?』
土「あ、あぁ。真選組副長の土方だ」
銀「思ったより元気で安心したよ。万事屋やってる坂田銀時っていーます」
『ご挨拶が遅れてしまって申し訳ございません。苗字名前です。その…助けていただいてありがとうございました』
丁寧にペコリとお辞儀する名前に顔を見合わせるのだった。
『退院後の住まいや仕事を提供してくださると沖田隊長から聞いて私、感謝してもしきれm――』
銀「ちょ!!!ちょっと待ったぁぁぁぁ!!!」
『・・・!?』
突然両方を鷲掴みにされて今度は名前が目を丸くする。
銀「その敬語!なんかムズ痒いんだよ!!」
土「そうだな。普通にしてくれて構わん」
『そ、そうですか?すみません…』
えへへっと少し照れて名前はふんわりと笑った。
土「そんな風に笑えるんだな」
焼きついて離れない惨劇の中心にいた名前の顔がちらつく。
銀「と、とりあえず!準備しましょーか?」
土「じゃ俺は受付に行って退院手続きを済ませてくる」
『はい。よろしくお願いいたし――』
土「名前?」
言われて「あっ」と口元に手をあてて、詰まった息をふーっと思い切り吐き出した。
『お願いしますねっ!』
土「やりゃ出来んじゃん」
と、満足そうに微笑んで部屋を出て行った。
『え~っと...坂田さんは――』
銀「銀ちゃん」
『???』
銀「俺は“万事屋銀ちゃん”で通ってるの。だから銀ちゃんって呼んでくれたら嬉しいな」
土方とは違いニンマリと笑う銀時に、名前は一瞬頬を染めた。
『銀ちゃ……銀さんでいいですか?』
銀「ま、いっか。堅苦しい敬語もナシな!恩人とかそんなんで名前が負い目に感じることなんかないんだからさ」
『ぅん。ありがとう…』
銀時が名前の髪をポンポンと撫でたのは無意識だったが、少し照れくさそうに笑う名前の眼が、心の底から笑ってはいなかった事には気付いていた。