第9章 あなた
「生きて…」
「え…?」
「翔ちゃんは生きて…?」
「智くん…いやだよ…」
「生きて、俺と一緒に感動するはずだったこと、して?」
「え…?」
「俺、向こうで待ってるから…翔ちゃんがあっちにきたらさ、たくさん話きくから…」
智くんの目が潤んだ。
「だから…生きて…」
「智…」
どんどん、どんどん眉が八の字になっていく。
「俺の分まで…たくさん生きて…」
ぎゅっと手を握ると、俺の身体を引き寄せた。
抱きしめると、智くんは泣きだした。
「翔ちゃん…俺…死にたくないよぉ…」
それは初めて聞く言葉で…
智くんが初めて見せる弱い姿で…
「翔ちゃんともっと生きていたいよぉ…」
「…智っ…」
智くんの細くなった身体を抱きしめて、一緒に泣いた。
声が枯れるまで、ふたりでずっと泣き続けた。
海鳥が一声だけ、鳴いていった。
気がついたら、辺りは真っ暗で。
智くんの身体も冷えきってて。
灯台の灯りだけが、海を照らしてた。
「戻ろうか…」
「うん…」
泣きはらした顔で俺を見上げた。
「翔ちゃん…もう一個…」
「え…?」