第9章 あなた
「智くん、ここ…」
「うん。覚えてた?」
「忘れるわけないだろ」
ここは、二人で初めて来た灯台。
初デートの場所だった。
「あ、もう灯り点いてるね…」
ふたりで灯台を見上げた。
車いすに乗る智くんの膝にブランケットを被せて、ゆっくりと灯台に近づいた。
「俺ね…あの時、ここに来るまで、自分のきもちわからなかったんだよね…」
「え…?」
「正直さ、翔ちゃんに好きって言われても、実感なくてさ…」
「うん…」
「キスとかもしたけど…その…べつにえっちしたわけじゃなかったし…」
「ま、まあね…」
「でもさ…ここに来て…翔ちゃんと初めてデートっぽいことしてさ…やっとわかったんだよね…」
智くんが俺を見上げた。
「この綺麗な景色を、翔ちゃんと見られて良かったって…」
「智くん…」
「一緒に、感動することができて良かったって…」
涙が勝手に溢れてきた。
「俺ね…翔ちゃんを残していくの、本当に本当に悔しいよ…?」
「うん…」
「でも…しょうがないじゃん…?これが俺達の運命なんだからさ…」
「いやだよ…」
「うん…わかってる…でも。翔ちゃん…俺は、死ぬよ?」
「いやだ!」
「翔ちゃん…」
智くんが俺の手を取った。