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ヘブンズシュガーⅠ【気象系BL小説】

第9章 あなた


「…そんなこと…言わないの…」


俯いてしまった俺の髪を、智くんは撫でた。


「ごめんね…翔ちゃん…」


それは優しい響きで。


残していくものの悲哀なんてちっとも感じさせないものだった。


髪を撫でる手をぎゅっと掴んだ。


「お願い…治療、しようよ?」


「無理だよ…」


「だって…まだいい方法、あるかもしれないし…」


「翔ちゃん…もう…俺、疲れた…」


細くなった腕…


抗癌剤治療で、吐いてしまって…


ろくに食事も摂れなくて。


智くんは一回り小さくなってしまった。


「もう…次の抗癌剤治療を受ける体力がないんだよ…」


「智くんっ…」


ぎゅっとその細い身体を抱きしめる。


「いかないで…」


「ごめん…翔ちゃん…」


「そばに居てよ…」


答えはなかった。


そのままじっと、智くんを抱きしめていた。


「翔ちゃん…」


「ん…?」


「俺ね、お願いがあるんだ」


智くんは、俺を見上げるとにっこり笑った。




次の日、外出許可を貰った。


午後でいい。しかも3時過ぎに来いって言うから、そのとおりにした。


車いすを車に積み込み、智くんを助手席に乗せた。


「では、いってきまーす!」


元気に、職員の人たちに挨拶して、車を走らせた。
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