第8章 華落 3
先生は黙って首を横に振った。
「…しない…しないよ…潤」
「先生…」
「あの人のことだ…どうせ無理やりだったんだろ…?」
「……」
「それとも、好きになった?」
「そう思いますか?」
「…思わない…」
先生は、笑った。
「今日のお稽古は休もう…」
そう言って、教室に電話をかけ始めた。
「さあ、潤…おいで…」
先生が腕を広げてくれた。
そっと胸に飛び込むと、ぎゅうっと抱きしめてくれた。
「…怖かっただろう…ごめんな…」
「なんで先生が謝るんですか」
「どうせ俺の話、しにいったんだろ?」
「それは…」
「隠さなくていいから…」
そのままソファに腰掛けて、そっと頭を抱いてくれた。
「潤…俺はね…」
髪を撫でながら、まっすぐに顔を見る。
「お前の闇も、全て引き受けるよ」
「え…?」
「だから…なにも心配するな」
「先生…?」
それきり先生は何も語らず、ただ僕を抱きしめていてくれた。
温かいその腕に抱かれて、僕は全て忘れて深い眠りに落ちた。
全て、先生に委ねて…
目が覚めたら一人きりで…
夕暮れの赤が部屋を染めていた。