第8章 華落 3
次の日、先生の朝食の準備を終えてすぐに家を出た。
とてもじゃないけど、朝食をとれる気分じゃなかったから、食べなかった。
そんな僕を先生は心配したけど、なんとかごまかしてきた。
タクシーの中で、手を握ると汗をかいていた。
緊張している…
一体、翔さんが僕になんの話なんだろう…
不安になりながら、ロビーに足を踏み入れた。
「よう…こっち」
翔さんが手をふる。
白いシャツにジーンズというラフな服装なのに、育ちの良さがにじみ出ていた。
「部屋、とってあるから行こう」
「え?」
「ここじゃできない話なんだ」
鍵を持って歩き出す。
僕はついていくしかなかった。
エレベーターに乗っても、何も喋らなくて。
とても気まずかった。
部屋に入ると、翔さんはお茶を淹れてくれた。
「ありがとうございます…」
「松本くんは…もう弟子入りして何年になる?」
「さあ…8年くらいですかね…」
「そうか…一般のお家からよくここまで腕をあげたよね」
「ありがとうございます…」
「冬の花展の花盛見たよ。あれは良かった」
「そうですか…」
「黄の薔薇が…良かったね…」
お茶の味がしなかった。
なんでこんなところで…
この人とこんな話してるんだろう…