第8章 華落 3
携帯に見慣れない番号から着信があった。
夜の教室が終わってそれに気づいた。
先生のお道具を片付け終わってから、折り返し電話してみた。
『もしもし…?』
「あ、松本ですけど…」
『ああ…ありがとう。電話くれて』
翔さんだった。
「え…なんのご用ですか…?」
『今、教室終わったろ?これから出てこれないか?』
「でも…先生の食事をお作りしなきゃいけないので…」
『は…お前そんなことまでしてるの?』
「悪いですか?」
『じゃあいいよ。明日、時間ないか?』
「午前中なら」
『それでいい。帝国のロビーで待ってる』
「わかりました…」
電話を切ると、ドア越しに先生がこちらを見ていた。
慌てて戻ると、もう帰る準備ができていた。
「すいません。今…」
「いいよ…電話はいいのか?」
「あ、はい…明日の午前、少し出てきます」
「ああ、いいよ。行っておいで」
微笑むと、僕の道具の手入れをしてくれた。
「潤は…いつもお道具を大事に使っているね…」
「そうですか…?」
「いいことだよ…俺達は大地のいのちを頂戴して生計を立てているんだからね…」
鋏をかざした。
「だからお道具をきちんと手入れして、いのちに敬意を表さないといけないんだ」
「はい…」
先生の横顔は、とても美しかった。