第8章 華落 3
帝国ホテルのロビーで、二人を待った。
二時間くらい待っていたら、二人が歩いてくるのが見えた。
僕はそっと先生に近づいて、肩を叩いた。
「先生…」
「潤…」
先生は驚いた表情をしていた。
でも、すぐにっこり笑った。
「迎えにきてくれたの?」
「え…?」
「帰ろう。潤」
そっと僕の手を握った。
「待てよ…」
翔さんが止めようとしたけど、先生は振り返らなかった。
「先生…」
「ごめんね、潤。不安になった?」
「え…」
「俺はね…逃れられない闇がある」
「先生…」
「でも、お前という光がある」
僕の手をぎゅっと掴んだ。
「だから…傍にいてくれないか…」
前を向いたまま、先生が言った。
「お前と…ひとつになりたいよ…」
そのまま帝国ホテルをでて、タクシーに乗った。
家に帰ると、先生は僕を寝室へ連れて行く。
「俺に抱かれるのは嫌か?」
黙って首を横に振った。
「ありがとう…潤…」
先生は、なにかをしようとしてる。
それが僕にはなにかわからなかったけど…
でも、先生には僕が必要で。
僕を求めていて。
だから、待っていようと思った。
どんなに今は、報われなくても…
先生から、月桂樹の香りがした。