第2章 夢に舞い、恋に舞う
「すっすいませんでしたっ…」
先生はバチを太鼓の横に置いた。
「何を謝っておられるんですか…大したものです」
「へ?」
「何年、修行されましたか?」
「あ…10年ほどです…」
「会社員をされながら?」
「あ、はい…始めた当初は学生でしたけど…」
「そうですか…」
先生は何かを考えこむ顔になった。
「相葉さん、本格的に日舞をやることは、考えておられませんか?」
「えっ?」
それから…
あれよあれよという間に、僕は櫻井流の門人になった。
松本の先生はとても残念がってたけど、櫻井先生のところなら間違いないからと送り出してくれた。
そして、なんの伝もコネもない僕なのに、櫻井先生は僕を内弟子として迎え入れてくれたのだ。
これは異例のことで…
上のほうからも、かなり色々言われたみたいで…
でもお師匠は頑として譲らなかったそうだ…
僕をどうしても、弟子にしたい、と。
僕はわけがわからなかった。
仕事もやめて、お師匠と寝起きを共にするようになっても、実感が持てずに居た。
でも…
お師匠の笑顔…
お師匠の舞う姿…
ずっと見てるうちに。
やっと僕は、夢の場所まで辿り着いたんだなって思えるようになってきた。