第2章 夢に舞い、恋に舞う
夢のような心地で、着替えて先生の前に出た。
「では、この教本のここ…」
夢の人が生徒さん用の教本を見せてくれた。
いい香りがした。
その香りにどぎまぎしてしまって、ちっとも内容が頭に入ってこない。
「す、すみません…もう一度…」
「ああ…流派が違うとわかりにくいかな?」
先生は微笑で、もう一度僕におしえてくれた。
「では、お願い致します」
先生が頭を下げた。
僕は一段あがった板敷きに上がらされた。
「先生…僕にはこんなとこ勿体無いです…」
「いいですよ…ふたりきりなんだし…」
どきりとした。
そうこの広いお稽古場に、僕達ふたりきりなんだ…
「わかりました…」
ステージに正座し、手をついた。
「櫻井先生、よろしくお願い致します」
先生が頷いて、太鼓のバチを手にとった。
拍子までとってくださった。
三味もなにもないけど、それだけで心地がよかった。
先生の拍子…
僕の心臓の拍子…
無心で舞った。
不意に拍子が止まった。
先生を振り返ると、じっと僕をみていた。
なにかまずいことをしたかな…
慌てて正座すると、頭を下げた。