第2章 夢に舞い、恋に舞う
櫻井流の門を叩いた時、僕の運命は大きく変わった。
なんとか先生のこねを伝って、櫻井流のお稽古の見学に行くことができたのだ。
生徒さんにお稽古をつける先生を見つけた時、心がざわめいた。
でも、櫻井流は僕にとってはとても敷居の高い流派で。
ここの生徒になることなんて、無理だった。
「相葉…さん?」
夢の人が、僕に声を掛けてくれたのは奇跡だった。
「松本先生からお伺いしていますよ。どうですか?一つ差してみませんか?」
すべてのお稽古が終わって無人になった、お稽古場の隅を指された。
「僕がみますから」
声も出なかった。
そのまま夢の人の顔をじっと見つめてしまった。
「僕の顔に、何かついていますか?」
先生が顎を撫でるまで、気が付かなかった。
「あっ…すいません。不躾でした」
「いえ…どうぞ…?」
そっと先生は僕に手を差し伸べてくれた。
「いえ…僕なんて…」
「聞いていますよ。僕のお稽古受けたいって、言ってくださっていたんでしょう?光栄です」
「いっ…いえっ…そんなっ…」
「お稽古着、あそこにありますから。どうぞ使って下さい」