第2章 夢に舞い、恋に舞う
用事もないのに、ふらふらと表に出る。
最近、お師匠の様子がおかしい。
なにかあると僕に触ってくる。
触るだけなら、お稽古のときに散々あるからいいんだけど…
その…
僕の気持ち良い所を…触ってくるというか…
わざわざ狙って触ってくるというか…
思い出してぶるっと震えた。
そう…
僕はお師匠に恋してる。
初めてお師匠をみたのは、みやこをどりの時。
お師匠が出てたわけじゃない。
居並ぶ可憐な花々にお稽古をつけていたのがお師匠だったのだ。
時々、さっと振りをしてみせるその姿。
立ち姿、佇まい。
全てが夢のようだった。
あんな人がいるなんて…
日舞を始めて10年以上になるが、お師匠をみるのは始めてだった。
たまたま東京である、みやこをどりのお稽古を見学できるというので、仕事を休んで赴いた。
ほんの軽い気持ちだったんだ。
なのに…あんな夢みたいな人を見かけてしまったら…
「翔…さん…」
先生の本名…
僕はこの日から、日舞にのめりこんだ。
手の届く人じゃないってわかってる。
僕みたいな素人に毛の生えた程度の者が、触れられる世界じゃないのもわかってる。
だけど、そうせずには居られなかった。