第66章 モノの子scene9
「大丈夫…人間に掴まるようなヘマ、しないよ」
そう言い残して、あっという間に姿が消えた。
「…じゃあ俺はヘマばっかりだな…」
苦笑いすると、褥に身体を伏せた。
修羅の香りと、和鬼の匂いがした。
どちらも、あいつ…
どちらも、あの人…
どっちつかずのまま、三月が過ぎた。
修羅は、完全に和鬼が消えたと思っている。
でも修羅が感じている焦燥感は…
無意識で和鬼に侵食されていくことへの恐怖なんじゃないだろうか。
そして、和鬼の涙。
修羅になりきれない自分の身体。
修羅になりきれない自分の心。
そんな自分への憤りだろうか。
あの日、突然現れた大人のモノ。
それが和鬼だったなんて…
紅蓮の炎を纏いながら、軽々と俺を抱え、そして空に飛び上がった。
なのに、目が覚めたら傍に居たのは修羅で…
艶然と俺に微笑みかけてきたのだった。
その日の朝、目が覚めたら隣で修羅が苦しんでいて。
手をかけようとしたら、金色の髪が俺の腕に巻き付いて。
気がついたら、和鬼がいた。
泣きながら…意識を失っていた。
呼んでいたのは…