第64章 モノの子scene7
「大野…?」
「うん…?」
そっと大野を抱き寄せた。
「もう…いいから…」
「そうか…」
手洗い桶の水で手をすすぐと、大野はにっこりと笑った。
手ぬぐいで僕の足を拭くと、満足気に頷いた。
「よし。いいぞ」
そろりと足を板敷きに下ろす。
まだ足がほかほかしてる…
「寝よう。和」
あの夜、大野と交わって…
それから大野は求めてこない。
あんな気持ちになりたくなかったから、僕にとってはいいことだったんだけど…
なんだか…今夜は身体が疼く。
「和…これ、どうしたんだ」
大野が僕の腕を取った。
「あ。なんでもない…」
さっと隠すけど、血のあとをにじませた手を大野は見逃さなかった。
手洗い桶の水で、手を雪がれた。
「あれ…?どこも怪我してないな…」
「だから…なんでもないって言ったろ?」
「なんだ…良かった…」
心底ほっとした声を出すと、手ぬぐいて僕の手を拭いて、布団に寝転がった。
「もう寝るか」
「うん」
「ほら、和…」
腕を広げて、僕を抱きしめた。
「何にもなくてよかった…」
そうつぶやくと、大野は寝息を立て始めた。
「…ばか…」
なんでか、そう呟いた。