第63章 モノの子scene6
下女に着物を脱がされて、無理やり湯桶に入れられた。
こんなの初めて入る。
「あっ…熱い…!」
「我慢しろ」
大野の声がしたかと思ったら、湯桶に衝撃が走った。
思わず目を閉じる。
ぎゅうっと誰かが湯桶に入ってきた。
恐る恐る目をあけると、目の前に大野がいた。
「こりゃ…熱いわ…」
声が呟いた。
「おい。ちょっと水を入れてやれ」
下女が笑いながら水を差してくれた。
「よーし。気持ちいいだろ?小僧」
「小僧じゃないもん…」
「ん?じゃあ、なんて名なんだ?」
「和…」
「和な。わかった」
そう言うと大野は桶の淵に手を載せた。
「なれたら、この湯桶もいいもんだぞ…」
そう言って、目を細めた。
ぼく…なにしてんだろ…
なんで大野と湯桶なんか入ってるんだろ…
なんで大野の笑顔なんか眺めてるんだろ…
ちゃぷんとお湯を弾いた。
大野がふふっと笑う。
身体があったかかった。
湯桶から出て、身体を洗うと、やっと着物を着せてくれた。
「ぼくの着物は…?」
なぜだか、ぼくに着せられたのは上等の絹の着物で…
「俺は最近、出世したんだ。だから心配するな」