第61章 モノの子scene4
洞窟の奥の湧き水で手を洗う。
右腕の傷はもう塞がりかけてる。
モノの中でもぼくは傷が治りやすくて。
雅鬼にあげようと切った傷と、翔鬼に噛まれた傷。
そして自分で抉った傷が消えていく。
布を水に浸すと、軽く絞る。
翔鬼と雅鬼のところに戻ると、二人の血に染まった顔を拭いた。
翔鬼を藁の布団に寝かせると、雅鬼を埋める場所を探した。
子鬼が洞窟の別の穴を見つけてきた。
雅鬼の身体を穴に横たえると、大きな岩で穴を塞いだ。
ごめんね…
後でちゃんと潤鬼と一緒に、モノの墓地に埋めるから…
あの大きな杉の木…
あそこに潤鬼はまだいるんだろうか…
「おとうさん…」
もう呼びかけられない。
モノの生き残りを探さなきゃならない。
雅鬼を寝かせた穴を閉じると、急に頭が回り始めた。
モノを復活させなきゃならない。
ぼくのやることをやらなきゃならない。
泣いてちゃ…だめだ…
ぼくは…修羅なんだから。
潤鬼が死んだとしても、ぼくがいるかぎり、モノは滅びない。
人間になんて、滅ぼされてたまるか。
雅鬼の眠る洞窟の穴の前で、手を握りしめた。
雅鬼…おまえのためにも。