第59章 モノの子scene2
翔鬼がぼくの中に入ってきた時、何もかもが見えた。
地上で潤鬼が戦ってる。
傍で頭から血を流しているのは…
雅鬼…
潤鬼は紫の髪を振り乱して、必死で雅鬼を庇ってる。
「…かなきゃ…」
「え…?」
「いかなきゃ…潤鬼が…」
「和鬼…」
翔鬼の腰を掴んだ。
「また食べてやるから…後でね」
知らない女の声だった。
しらない…ぼく…こんな声出せない…
「修羅…」
翔鬼を僕の中から出した。
「うっ…」
翔鬼が苦しそうに呻いた。
「ふふ…またね…翔鬼」
そう勝手に言うと、ぼくの中の女は勝手に身体を動かした。
驚くほど身体が軽かった。
翔鬼がやってきた縦穴を見上げた。
いけそうな気がした。
落ちていた着物を軽く纏うと、紐で軽く腰を縛った。
軽く膝を曲げると、一気に跳ねた。
「修羅っ…」
翔の声が聞こえたけど止まれなかった。
ぼくの身体はどんどん跳ねて、すぐに地上に出た。
たくさんの人間がいた。
ぼくの姿をみると、全ての人間が動けなくなった。
「人間ども…滅びろ」
ぼくの中の女が呻いた。
遠くの杉の木の根本で、潤鬼と雅鬼が倒れてた。
一気にそこまで跳ねた。
長い紫の髪で、雅鬼を隠すように潤鬼は倒れていた。
「潤鬼…」
二本の角が悲しく雨に濡れていた。