第58章 モノの子scene1
「大野はね…お前のおかあさんの、おにいさんだよ」
「おにいさん…?」
「おかあさんより先に生まれた人ってこと」
よく、わからなかった。
「潤鬼がおまえのおかあさんを食べちゃったから、恨んでるんだ」
雅鬼は引き締まった顔をした。
「お前置いたら、俺も戻らなきゃ」
「い…いや…いかないで、雅鬼」
ふっと笑うと目尻のシワが濃くなった。
「翔鬼が後からくるから…大丈夫だよ?」
「いや…一人にしないで…こわい…」
おとうとがどういうものかわからなかったけど…
その大野という人が怖かった。
ぼくたちを恨んで…
ずっと追いかけてくる都人。
岩の階段を飛び跳ねながら、雅鬼は苦笑した。
「本当に和鬼は…モノなのかな…」
「ぼっ…ぼくはモノだ!」
ムキになって答えると、さらに雅鬼は笑う。
地下に着いたら、更にそこから横穴を辿っていく。
ずっと雅鬼の腕に抱かれて、おとなしくしているしかなかった。
見えないから…
広い空間に出ると、そこには湖がある。
その畔にぼくは降ろされた。
雅鬼の足は早くて、夜目も効く。
多分ここまでは人間は追ってこれないはずだ。
「…戻るね…」
「いやっ…雅鬼っ…」
「潤鬼を連れてくる」
「あ…」
「すぐに翔鬼もくるから、ね?」
雅鬼は、俺の頭をぽんぽんと撫でた。