第45章 哀婉scene9
『智は頑固だからな…その癖、よくないぞ』
慎吾…
『俺、立派な兵隊になって、お前のこと迎えに来るから』
そう…最後に会った時。
彼は軍服を着てた。
『じゃあな。待ってろよ』
そう微笑んで、慎吾は旅立った。
そのまま、帰ってこなかった。
俺は慎吾が死んだことを認められなかった。
『智は頑固だからな…』
通知が届いた時、信じられなくて。
内地から満州に渡った。
確認しようにも、混乱が酷くて…
日本に帰る路銀も尽きて…
流れに流れ着いたのが、日本租界のある上海だった。
借金こそしなくて済んだが、俺は慎吾を失った喪失感から、立ち直れなかった。
なんで自分が生きているのか、わからなかった。
だから、自分を傷めつけた。
最初は酒を飲んで、ケンカをふっかけたりしてた。
でもいつまで経っても死ねなくて。
誰も殺してくれなくて。
でもある日、ケンカに負けた相手に、犯された。
その時気づいた。
人肌に触れている瞬間だけは、慎吾のこと忘れられるって。
俺は慎吾が裏切って帰ってこない恋人だと思うことにした。
そうして身体を売っていたら、生きていこうって気になった。
生きていけるって、思ったんだ…
だって、慎吾は俺の中で生きているから。