第6章 華落
流れ出る先生の体液が、僕の心により寂しさを呼んだ。
「和也…さん…」
遠くなる背中に手を伸ばす。
「愛して…る…」
篝火の音が、消える。
オレンジ色に照らされていた回廊が、薄暗くなる。
そっと着物の崩れを直し、先生の残していったものを拭き取る。
裾を直すと、先生の後を追う。
もう何年もやってきたことが…
今は、酷く虚しかった。
「え…?僕が?」
先生はにっこりと笑って僕の手を掴んだ。
翌日の冬花展は盛況だった。
夕方になって、篝火が焚かれると静かに境内が清められていくようだった。
「明日、メインの花盛を生けなさい」
「でも…先生…」
「今のお前なら、できるよ」
そう言って、僕の指を舐めた。
「あっ…だめです…」
「なんで…?」
「僕なんて…」
じゅるっと音を立てて、僕の指は先生の口に飲み込まれた。
「あ…」
言い知れぬ快感が、裾から這い上がってくる。
「この荒れた手…」
「いや…やめて…」
「綺麗だよ…」
「え…?」
「潤…明日、自信を持ちなさい」
先生は僕の目を真っ直ぐ見た。
「必ずやり遂げなさい」
そういうと、篝火に吸い寄せられるように歩いて行った。