第41章 哀婉scene5
窓辺に小椅子を置いて、キセルを吹かす。
紫煙がゆったりと俺に纏う。
常連がわざわざ日本から買ってきてくれた煙草。
こっちのはとてもじゃないけど、まずくて吸えない。
火種を叩き落とすと、キセルを置いた。
雨がうっとおしい。
雨が煙幕を作っているようで、上海の街が見えない。
頭が痛い。
カチャっとドアの開く音がした。
振り返ると、そこには誰も居なかった。
「誰…?」
清服の裾を払うように立ち上がると、ドアまで歩く。
ドアから廊下を覗いた瞬間、腕を引っ張られた。
「わっ…」
そのまま転びそうになって、思わず目を瞑った。
「智…」
いつの間にか、誰かの胸に抱かれてた。
この匂い…この声…
「翔…?」
「きたよ…智…」
翔が俺の頬を包むと、上を向かせた。
そのまま俺の唇に、自分のそれを重ねた。
「翔っ…」
俺は思わず抱きついた。
ぎゅうっと抱きついて、幻じゃないか確かめた。
「智、いこ?」
俺の身体を話すと、手を握って二階への階段を翔が登っていく。
なにこれ…
夢じゃないよね…?
翔の手には、青い金平糖の入った瓶が握られていた。
きっと俺への贈り物だ。