第26章 鈴~リン~
「なんだそんなことか」
そう言って、先輩は私の教科書を手にとった。
左手にペンを持つと、私の名前の上に、勢いのある字でこう書いた。
”仁科和也”
「はい。夢、叶ったでしょ?」
そう言って、また頭を撫でた。
顔を上げると、カズヤ先輩の顔が目の前にあった。
びっくりして目を閉じると、唇に軽くなにか触れていった。
目を開けると、カズヤ先輩が私の髪を持っていた。
するっと手を滑らせて落とした。
「ごめんね。鈴」
そう言って先輩は教室を出ていった。
私の名前、知ってたんだ…
今度は先輩は手を振らなかった。
これで永遠の別れになるんだな、と心のどこかで理解した。
でも涙は出てこなかった。
数日して、本当にカズヤ先輩は居なくなった。
心がからっぽになった。
でも私は機械的に勉強してた。
涙も一回も出てこない。
そのまま期末テストの時期がきた。
中間テストは2位だったので、期末も諦めていた。
それでも期末は全力で臨んだ。
天文学者という夢が私にはできたから。
そうしたらいつかカズヤ先輩に会えるかもしれない。
力がみなぎってくるのがわかった。