第17章 海鳴り
三日後、俺は東京に帰った。
住んでいた部屋を引き払い、会社に辞表を提出した。
15年勤めた会社は、あっさりと辞表を受理してくれた。
なんの後腐れもなく、俺は会社を後にした。
自動ドアを出た瞬間、見上げるととても青い空が、ビルの谷間から見えた。
バタバタと後ろから走ってくる音がした。
振り返ると、後輩の有岡が駆け寄ってくるところだった。
「大野先輩っ…辞めるって本当ですか!?」
「おお…わりいな…挨拶もしないで」
「なんで!?なんでですか!?」
「え?」
「だって…あと半年もしたら、大野先輩を呼び戻そうって、部長が言ってました…」
「えっ…ほんとかよ…」
「だからっ…辞めないでください!また、一緒に仕事しましょうよ!」
有岡が目を真っ赤にして訴える。
ああ…翔くん…
翔くんの、言ったとおりだったのかもしれない…
「ごめんな…有岡…」
「大野先輩…」
「俺、漁師になるんだ!」
「へっ!?」
有岡の顔は傑作だった。
夜、民宿に戻ってもあの顔を思い出すと笑えた。
「なーに?智くん…やらしい…」
翔くんが俺のにやにや顔をみて、嫌な顔をしてる。