第17章 海鳴り
「違う…雅紀…」
雅紀の腕をぎゅっと握った。
「俺は…なんにもないんだ…」
「え?」
俺はからっぽだ。
長いこと、ネジやロボットの中で人間の仮面を被って、人間のふりをしていたら、からっぽになっちまったんだ…
だから。
死ぬ。
「俺は、生きてる意味が…わからないんだ…」
「大野さんっ…いのちは…命ってやつはさ…そこにあるだけで尊いんだ!」
尊い…?
俺の命が…?
そんなはずない。
俺は無駄に生きてるんだ。
そんな奴の命が、翔くんと同じくらい尊いわけがない。
だって、俺は誰からも何からも必要とされていない。
俺が居なくなったって、何も変わらないし、変えられない。
雅紀の腕をそっと解いた。
「お前がなんで泣くんだよ?」
「だって…大野さんっ…」
「俺なんかのために、泣くな」
立ち上がると、大きく息を吸い込んだ。
…だから釣りに出るのを躊躇ってたんだ…
雅紀の前で死ぬわけにいかない。
そう思ってたのに…
俺の足は船の柵に掛かった。
そのまま、腕に力を入れて柵を乗り越えた。
空が。
蒼い…