第17章 海鳴り
雅紀にはわからない…
だから俺は何もいうことができなかった。
「大野さん…だめだよ…?」
何がだよ…
「死んじゃだめだ…」
「え…?」
雅紀はいきなりガバッと俺を抱きしめた。
「大野さんは、健康な身体がある…だからっ…」
ぎゅうっと雅紀の腕に力が入った。
「死んじゃだめだぁっ…」
…なんでわかったんだろう…
俺の涙は止まったのに、雅紀の涙はいつまで経っても止まらなかった。
太陽が、だんだん頭上に上がってくる。
海面が明るい。
「翔は…治らないんだ…」
「え?」
「一生、病気と付き合っていかなきゃいけないんだ」
声が震えてる。
「でも、翔はすごく前向きに生きてる…だって、生きてるんだもん…」
雅紀はぐいっと身体を離した。
「…なのに健康な大野さんが、なんで死ななきゃいけないの…?」
「雅紀…」
真っ赤な目からぽろりぽろりと涙が落ちる。
「命を捨てるほど、辛いことあったの…?」
雅紀の手が温かい。
喉の奥から、熱い塊が上がってきて何も言えない。
違う…
違うんだ雅紀。
俺は、辛いことがあったから死にたくなったんじゃない。