第17章 海鳴り
もう二度と戻ることはないであろう職場を思った。
今日もきっとあのコンクリートの箱の中では歯車とロボットがせめぎ合いをしてるんだ…
そう思ったら、なんかおかしくなった。
俺が居なくたって…
俺なんかが居なくったって、アイツらには関係ない。
アイツらの世界から俺が消えたところで、部品が一個だけなくなっただけで。
せいせいした、そう思うだろう。
そこには、俺によく似た歯車がまたハマるんだ…
そうして永遠に、機関車みたいに走り続けるんだ…
真っ黒な煙を出しながら…
「大野さん…?」
雅紀の声が聞こえる。
でも笑いが止らない。
「どうしたの…」
心配そうな声。
ああ…人間の声だ…
「大野さんっ!」
突然、雅紀が俺の肩を掴んだ。
「え…?」
「何泣いてるんだよ…」
泣いてる…?
俺が…?
雅紀が首に巻いていたタオルを外して、俺の顔をゴシゴシ拭いた。
「ほんと…どうしたの…?」
雅紀のほうが泣きそうになりながら俺の涙を拭った。
「…どうもしねーよ…」
手の甲で顔を拭ったら、涙が付いていた。
ホントだ…俺、泣いてる…
「なんか…辛いことあったの…?」
雅紀の声が遠くに聞こえる。