第17章 海鳴り
ぺたぺた廊下を歩いて行くと、厨房から灯りが漏れてた。
そっとガラス戸を開けると、雅紀が茶碗を洗ってた。
「雅紀」
「あ、大野さん」
「なんか飲むもんちょうだい」
「あ、はーい」
雅紀は手を拭くと、冷蔵庫からファンタの瓶を取り出した。
「オレンジでいい?」
「おう」
栓を抜いて、俺に差し出す。
「ごめんね。和と潤の世話してもらって…」
「いいんだって…お前も忙しいし、翔くんだって身体弱いんだから…気にすんなよ」
「だって、お客さんなのに…」
「10日居たら客じゃねえってお前が言ったんだろ?」
笑いながら言うと、頭を掻いた。
「明日、釣り行こうよ?大野さん」
「ん…」
「折角来たんだからさ、ね?」
俺の手に握ってる箱を、雅紀はじっと見てる。
「うん…」
折角二人がそう言ってくれるから、翌朝早く俺は釣りに出た。
雅紀の操る船は危なげなく進む。
凪いだ海を見ながら、俺はまた別世界に来たと思った。
朝日があたって、きらきらひかる海面。
空と海の境目のブルーが本当に綺麗で。
心の中にあるドロドロとしたものが溶けていくようだった。