第17章 海鳴り
翔くんは病気を抱えてるらしい。
本当は東京でどっかに勤めてたらしいんだけど、病気になって故郷に帰ってきたって聞いた。
こいつらの母親はとっくに亡くなってて、双子の和と潤の世話をしに雅紀もまた、仕事を辞めて故郷に帰ってきたとか…
父親は世界を一周する外国航路の船員で、年に何回かしかここには帰ってこない。
兄弟、支えあって生きてた。
その姿が、とても美しいと俺は思った。
こんなのテレビのバラエティ番組とかで見たら、多分嘘くせえと思っただろう。
だけど、こいつらのこと見てたら、本当に美しいと思ったんだ。
皆、お互いのことを本当に必要としてて、信頼してて。
歯車とロボットの中で息をしてた俺には、本当の人間の姿に見えたんだ…
だから。
暫くこいつらを見ていたいと思った。
死ぬ前に、美しい物を見ていたいと。
「大野さん、おかわりは?」
雅紀が手を伸ばしてる。
「いや、いいよ。俺も風呂入るよ」
「え?じゃあ和と潤があがったら呼ぶから」
「いいって。アイツらのこと見といてやるよ」
10分後には後悔したけど、まあいい…
しかしあのチビども…
俺のことなんだと思ってんだ。
トーテムポールじゃねえぞ!俺は!