第17章 海鳴り
「ごめんね。大野さん」
雅紀が座布団を敷きながら、片手で拝む。
「いいよ…チビどもに静かにしてろってほうが無理だろ…」
痛む腰をさすりながら敷いてくれた座布団に座る。
隣の部屋では和と潤の笑い声が響いてる。
まるで別世界だ…
コンクリートに囲まれたビルの中でずっと息をしてた。
ビルの中には、歯車とかロボットばっかりで…
皆、人間の仮面を被って生きてた。
俺も、そんな中の一人だった。
なのにここには、本物の人間が居た。
一つ、息を吐く。
俺、歯車でもロボットでもない…
生きてる…
”大野さん、大丈夫だって…”
”何年かしたら絶対に帰ってこられるから…”
仮面はいうけど、その仮面の下ではニタニタ笑ってる。
歯車が一個、ぶっとんでいって喜んでるんだ…
「大野さん?」
気がついたら目の前にお膳が出てた。
「あ、ごめん。ありがとう」
雅紀と翔くんが俺の顔を心配そうに覗きこんでる。
「い、いただきます」
手を合わせて箸を取ると、二人共ほっとした顔をした。
「なに…?」
「ううん…別に…」
翔くんは儚げに笑うと、雅紀に向かって微笑んだ。
雅紀も、にっこり笑顔を返した。