第16章 レイン
「和也は、好きな人いるの?」
だいぶ細くなった腕を隠しもせず、潤が微笑む。
僕はその腕を布団に入れながら、少し逡巡した。
「そうだね…いないって言ったら嘘になるかな…」
「なに、そのはっきりしない言い方…」
「だって…まだ会ったことがないんだもん」
「え?会ったことがないのに、好きなの?」
「だから、わからないんじゃん…」
潤はくすくす笑うと、俺の手を握った。
「当ててあげようか」
「えっ」
「大野さんでしょ」
「あっ…えっ…」
「やっぱり…」
潤は目の端に涙をためながら笑った。
「そ…そんな笑うことないじゃん…」
「さすが俺の弟だね…」
ふっと、真顔になると俺の手をぎゅうっと握る。
「安心した…」
「え?」
「これで安心して死ねるよ」
「潤!」
「こら、兄ちゃんって呼べよ」
「兄ちゃん…」
「和也…頼んでもいい?」
「え?」
「大野さんのこと…」
「ばか…おまえが潤の代わりになんてなるかよ…」
「え…」
和也が傷ついた顔をした。
違う…そんな顔させたいんじゃないのに…
「お…お前はお前だろうが…」
ぎゅっと拳を握り締めると、もう一度和也を抱き寄せた。