第16章 レイン
「なあ…和也、いつ帰るの?」
大野さんが筆を握りながらこちらを見る。
紙のカンバスに、アクリルで絵を書いている。
「大野さんが出てけっていうまで居る」
「おまえなあ…」
そんなこと、言わないの知ってるよ。
だって大野さんは優しいもん…
優しすぎて、自分を傷つけるくらい。
僕は…
「大野さん、今日の晩ごはん何がいい?」
「なんでもいい」
むすっとしてカンバスに向かってる。
そこには潤の絵が書いてある。
潤、僕ね…
大野さんのこと、好きになったよ。
潤の言う通りだったよ…
僕は男の人を好きになる趣味はないと思っていたけど。
大野さんは別だった。
どうしようもないくらい、好きになった。
だから潤…
ごめんね。
大野さんを、僕にちょうだい?
「おーい、和也」
はぁいと、台所から返事が聞こえる。
潤みたいによく響く低音じゃない。
高い声が聞こえる。
ドアから顔だけ出した和也は、犬ころみたいな顔で俺を見てる。
全然潤と似てない。
ほんと、似てないんだから…
「なに?大野さん、どうしたの?」
和也は俺の隣に腰を下ろした。