第16章 レイン
眠っているような顔だった。
黒塗りの車に入れられる寸前だった。
小さな教会から、潤の棺が出てきて家族が最後の別れをしていた。
和也が俺を連れて行くと、皆、そこを開けてくれた。
小さな窓から、潤の顔が見えた。
…本当に眠っているような顔だった。
「潤…ごめんな…」
和也が、白いバラを俺に差し出した。
受け取ると、潤の顔の横にそっと添えた。
「潤……愛してるよ…」
そっと冷たい頬に触れた。
それはいつもと変わらない潤だった。
「…おい…目ぇ…開けろよ…」
微笑むような表情は変わらない。
「潤……置いていくなよ…」
その癖のある前髪も、そのままだった。
一年前となにも変わっていなかった。
「大野さん…」
和也の手が、俺の手を握った。
そのまま引き起こされると、抱きしめられた。
潤の棺は閉じられ、黒塗りの車に載せられた。
「潤っ…」
短く叫ぶと車はエアホーンの音を鳴らし、ゆっくりと走り去っていった。
「ごめんなさい…大野さん…生きてるうちに会わせてあげられなくて…」
和也が俺の腕にしがみついた。
「いや…最後に会えただけでもよかったよ…ありがとうな…」
また和也はまっすぐ俺を見上げた。