第16章 レイン
「大野さんだめえっ…」
和也が俺の腕にしがみついた。
「離せよ…離せっ!」
なんで会わせてくれなかった。
なんで一緒に居させてくれなかった。
その心臓が止まる瞬間まで、なぜ寄り添わせてくれなかった。
「ふざけるなあああっ…潤っ…」
和也が俺の胸に顔を埋めてる。
「大野さん…大野さん…」
ゴトっと、ナイフを床に落とす。
「一日だって…あいつのこと、忘れたことなんてなかったんだ…」
「うん…」
「この一年、一日だってあいつの顔が浮かばない日はなかったんだ…」
「うん…うん…」
「俺はあいつのこと…愛してたんだ…」
いつの間にか涙が頬を伝っていた。
和也の髪を俺の涙が濡らしていく。
とめどなく溢れる涙を、止めることができなかった。
「潤っ…」
そのまま声を上げて泣いた。
いつまでも涙が止まることはなかった。
和也はずっと俺を抱きしめていた。
そのぬくもりが、だんだん身体に染み渡ってきて。
一年かかって凍った俺の心を溶かしていく。
「潤っ…ごめんな…潤っ…」
潤にあんな辛い決断をさせてしまったのは、俺の弱さだ。
どうして、潤が最期まで頼れる男になれなかったんだろう…