第12章 悪徳の花
なぜだか、怒りが湧いた。
なんで憐れむ。
なんで施そうとする。
言いようのない怒りが止らない。
「別に大したことないから…」
そう言って引き返そうとしたら、腕を掴まれた。
「いいから…顔色が、本当に良くないんだ。医師として見逃せない」
真剣な面差しで言われ、言い返せなくなっていると、櫻井医師はそのまま腕を掴んで歩き出した。
「気にするな。時々こうやって従業員の人たちを診てるんだ」
そのまま歩いていたら、看護師の女性たちとすれ違った。
看護師の女性たちは俺たちを見ると、顔を赤らめた。
そしてコソコソとなにか話しだした。
「やっぱり、翔先生って…」
「しっ…聞こえるわよ!」
…そういえば聞いたことがある。
櫻井医師はゲイだって。
だから、いい年なのに結婚もしてないんだって。
ふーん…
俺の中に、黒い感情が湧き上がってきて止らない。
こいつ、ゲイなんだ…
じゃあ、俺がストレス発散してもいいよな?
ゲイなんだから…
人間じゃないんだから…
楽しくなってきた。
この優秀で、誰からも好かれるコイツを、メチャクチャにしてやる。
こんな薄汚い清掃員の俺に、汚されればいいんだ。