第12章 悪徳の花
汚れたスニーカーを、ダスターで軽く拭いて、ロッカーに上がる。
重い足取りで、地下からの階段を上がる。
階段室の扉を開けたら、病院の一階へ出る。
従業員ロッカーは一箇所にまとまっていて、清掃員もみんなそこを使っている。
ありがたいことに、宿直などがあるから、シャワーや仮眠室まである。
これはどの従業員も使っていいことになっている。
清掃で汚れた身体をシャワーで流す。
なるべく熱い湯を浴びる。
身体を消毒される気がするから。
持ってきたバスタオルで身体を拭いて、服を着る。
鏡を見ると、暗い顔をした男が立っていた。
俺…こんな顔してたかな…
頬はこけて、目の下には隈が浮いている。
色白だと言われる顔は、通り越して青い。
こんな陰鬱な顔をしているのが自分だと、少し驚く。
面倒でヒゲを剃るのも3日ごとになっていた。
「は…」
思わず笑いがこみ上げてくる。
こんな哀れな男に、いつからなった。
会社が倒産したくらいで、何をそんなに拗ねている。
また、戻ればいい。
あの世界に。
たったそれだけなのに…
拳を握りこむと、鏡を殴った。
ヒビすら、入らなかった。