第11章 玲瓏
そのまま朝まで、眠れずにいた。
和も眠っていない。
二人でただ、抱き合って。
お互いの熱を感じていた。
なぜだか、ひどく落ち着いた。
「大野さん…そろそろ…」
「ああ…」
名残惜しくて、手放したくない。
「…今日は、お休みなんですか…?」
「ああ」
「もしよかったら…」
「え?」
「今日はここで過ごしませんか?」
「流連ってことか…?」
「…お金なんていりませんよ…」
「いかんだろ…お前の商売なんだ」
「…僕の気持ちです…」
「和…」
「僕、こんなことしかできないから…」
それでも、金はいらないという和を説得して、俺は流連(いつづけ)をすることになった。
俺の休暇は、3日。
その間、ずっと流連することにした。
「本当にいいんですか?大野さん…」
味噌汁を出しながら、和が訊く。
「三食出て、和がついてんだ。安いもんだろ」
そう言うと耳まで真っ赤にして、背中を向けた。
「嬉しい…」
ぽそりとつぶやくと、また障子の向こうに消えた。
なんとも、幸せな気分だった。
こんな朝、経験したことない。
飯の炊ける匂い。
味噌汁の香ばしい匂い。
干物の焼ける匂い。
どれも、遠い昔に無くした匂いだった。