第11章 玲瓏
「大野様…?」
「えっ…よ、よせよ。様、なんてつけられるようなお偉いじゃねえよ」
「准尉は、充分お偉いと思いますけど…」
「大野さんって呼べよ。様なんて仰々しいんだよ」
「はい…わかりました」
くすっと微笑んで、俺の顔を見つめてくる。
綺麗だ…
こんな薄汚れた仕事をしているのに。
なんて透明なんだろう。
「…たまたま死ななかっただけだよ…」
「え?」
「死ななかったから、長生きして出世しただけだ…俺自体は、偉くもなんともねえよ…」
だまって和は話を聞いた。
「同期のやつらは、どんどん死んでいくのにな…」
そっと和の手が伸びてきて、俺の手に重なった。
「お辛かったでしょう…」
少し、潤んだような瞳…
「ああ…」
それを見ていたら、素直に答えたくなって。
どれだけそうしていただろう。
和の手が冷たくなって。
「炭、足していいか?」
「寒いですか…?」
「いや…お前の手が冷たいから…」
「私の事なんて…」
「いいから…炭を」
「…はい…」
また襖を開けて出て行くと、炭を入れた箱を手に戻ってくる。
くべると、俺の顔を見て微笑んだ。
息を呑むほど、美しかった。