第10章 コーヒー
昨日のことが、寝ぼけた末にやったことでも…
彼女かなんかと勘違いしてやったことでも…
嬉しかった。
暫くこの幸せの貯金で生きていけそうだった。
だから…
俺の職人人生、掛けてみようかな…
「雅紀…昨日の話だけどさ…」
「うん…」
「俺、お前と一緒にやるよ」
「えっ…」
雅紀が顔を上げる。
俺の顔をみると、満面の笑みが広がる。
「ほんと!?智!」
「うん…」
「いいの!?本当に」
「いいよ…お前となら…一緒にやっていけそうな気がする」
「ありがとう…」
雅紀の目に、みるみる涙が溜まる。
「何泣いてるんだよ…」
「だって…嬉しいんだもん…」
「バカだな…」
そっとその頬に触れて、涙を拭った。
「泣くほど嬉しいことかよ…」
「うん…嬉しい…本当に嬉しい…」
「そっか…なら、よかった」
「ありがとう…智…」
雅紀は胸に顔を埋めた。
俺は、ドキドキしながらその頭を抱きしめてみた。
拒絶されなかった。
そのままそっと髪に、唇をつけた。
雅紀にわからないように。
「これからも…よろしくな…」