第10章 コーヒー
「雅紀、先風呂はいったら?」
「え?いいの?」
「ああ。その間に布団ひくから」
「いいよ。布団くらい自分でひくよ」
「いいよ。お前、客なんだし」
「いつもごめんね。智」
「いいって…お湯入ってるからいってこいよ」
「ありがと」
雅紀が風呂に行くと、テーブルをどけて布団を引き始める。
2Kの狭いアパートだから、俺の部屋はベッドと布団で一杯になる。
そういえば、雅紀が初めて泊まりに来た時は、布団すらなくて…
二人でベッドで寝たなぁ…
あの頃は、まだこんな気持ちに気づいてなかったから…
平気であんなことしてたけど。
「今は無理だな…」
ひとりごちると、ベランダのガラス戸を開けて、タバコを咥える。
火をつけると、深く吸い込んで吐き出した。
「もう…10年か…」
あいつも33歳になった。
おれも35歳。
あんなこと考えるようになったんだ…
独立…
今まで考えなかったわけじゃない。
タンス以外にやった仕事は高く評価されてきた。
でも、結局毎日やってることは、ひたすらタンスをつくることで…
会社の意向に従うしかなかった。