第9章 あなた
それから一ヶ月…
智くんは生きた。
痛みを取ることに重点を置いていたから、ほとんどを寝て過ごしていた。
時々起きて、俺と目が合うと微笑んで…
頬を手で包み込んでくれた。
会話はなくても、智くんが幸せそうにしているのはわかった。
そっと傍で手を握っていると、その表情はいつも穏やかだった。
「翔…」
「ん?なあに?」
「天国って、綺麗かな…」
そう言いながら、俺の指にはまる指輪を撫でる。
「綺麗なんじゃないかな…とっても」
「俺、悪いやつだからいけねーな」
「なんでよ」
「翔のバージン奪ったから」
「ばっ…ばかっ!」
そう言って笑うと、元気なころのままの笑顔で。
「指輪、ずっと持ってていいよ…」
「え?なんで…?」
「指に嵌めても抜けるんだ…」
「そっか…」
「大事にしてね…?」
「智くんがご両親に貰ったものだろ…?大事にするよ…」
「うん…」
微笑むと、眠りに吸い込まれていく。
「おやすみ…」
そっと頬を撫でると、温かかった…