第9章 あなた
そんな幸せはすぐに崩れる。
二ヶ月が過ぎた頃、智くんが熱を出した。
最初はそんな高い熱じゃなかったけど、だんだんあがって。
39度になったとき、病院に戻る決断をした。
多分、これが最後だろう。
それほど智くんは弱っていた。
定期的に通う病院での検査結果は、毎回最悪だったのだから…
「智くん…病院、戻ろうね…?」
熱い額に手を当てながら言うと、潤んだ目を上げた。
「いや…」
「智くん…だめだよ…?」
コートを着込んで準備していると、智くんが起き上がった。
「自分で歩ける?」
「翔ちゃん…お願い…」
「え?」
「今夜一晩だけでいいから…」
「智くん…」
「翔ちゃんが欲しい…」
「え…?」
俺たちは。
身体は結ばれていなかった。
男同士だということが、お互いハードルになっていたんだろうと思う。
俺も智くんもゲイじゃない。
ただ、好きになった人が男だったというだけで…
キスだけのプラトニックな関係のまま、ずっと傍にいた。
それでお互い、満足していたのだから…
「翔ちゃん…」
智くんがゆっくり立ちあがった。