【おそ松さん】マフィア松でスパダリ長兄松に溺愛されるだけ
第1章 お兄ちゃんから卒業
――あぁ、私の予想が当たらなきゃいいけど。
ため息を付きながら、虎の間へ入ればお兄ちゃんが居た。
「お兄ちゃん、おはよう」
「鈴、おはよう」
お兄ちゃんは、体格に似合わない人懐っこそうな笑顔を浮かべると、手招きをした。
「寝癖ついてる」
「あれ、本当?」
そういえば、寝起きのままうろうろしていたから……。
私がお兄ちゃんの側へ行けば、お兄ちゃんが手櫛で綺麗にしてくれる。
やっぱり、お兄ちゃんは優しくて気が利くし、カッコイイなぁ。
お姉ちゃんも美人で優しいしおとしやかだし、何と言ってもお兄ちゃんの近寄りがたい雰囲気を中和してくれる、最高の彼女。
「ね、お兄ちゃん。今日は何の話?」
「今日、は……」
お兄ちゃんが、言いにくそうに言葉を紡ぐ。
きっと、私の予想があたってたんだろう。
「――鈴、彼氏は居るのか?」
――あぁ、予想はあたってた。
首を横に振れば、お兄ちゃんはそうか、と言いにくそうに返事を返す。
「急に、親父がお前に婚約者を作ると言い出して、な……」
「へぇ、理由は?」
「教えてくれない」
あぁ、どうして?
どうして、あんなミスしちゃうの?
そのせいで、お兄ちゃんやお姉ちゃんから離れるなんて、嫌だよ。
「断れないかなぁ?」
「いや……、相手が、その……」
「どうしたの?」
「やけに、乗り気なんだ」
驚いて、お兄ちゃんの方を振り向けば、お兄ちゃんは寂しそうに笑う。
そっか、気持ちは一緒だね。
お兄ちゃんも、ずっと私と一緒に居たいんだね……。
「お前は、相手にとって都合が良いんだ。家同士仲がいいし、トップ同士も親友。しかも、これと言った男の影もないし、友好関係だって把握しやすい」
「ごめんね、私、友達作れなかったから……」
こんな所で、コミュ障という壁にぶつかるなんて。
友達なんて、お父さんが教えてくれた子だけでいいと思ってた。
相手も、ヤクザだからって犬猿されない気楽な仲だから、仲良くしてた。
それが、仇になるなんて、思いもわなかったよ。
「――いや、悪いのはお前じゃない。前々から、お前をよこせと向こうが言ってたんだ」
「そう、なんだ」
「お前が動くのと同時に、大きな金も動く」