第2章 愛しい人を脳裏に映しつつ……
力が無くなって、へなへなとその場に座り込む。
その時、がさりと落ち葉の音が鳴り、妹の悲鳴と弟の怒る声が聞こえた。
「誰だよ、邪魔するの!!」
あぁ、ごめん、邪魔だったよね。
所詮、私たちは双子だもん。
付き合うなんて、無理だったんだ。
「ごめん、邪魔したね。私、戻るから」
それだけ言うと、逃げるように走りだす。
後ろで「お姉ちゃん」という悲鳴が聞こえた。
口の中が甘ったるくて、息が苦しい。
見慣れた森の中も、今では思い出が詰まり過ぎてて地獄にしか見えない。
嗚呼、嗚呼、嗚呼。
真っ白で純粋だった弟は、天使の皮を被った悪魔だった。
丁度、家から出てきた母と目があった。
母は、私の顔を見るなり悲鳴を上げる。
「トトコ、どうしたの!?」
「何でもない。あぁ、私ね、働けなくなったから。もう、バイト代仕送りできないよ。当分、忙しくなるから帰ってこれないの」
逃げるように早口で言うと、母は何か言いたげに口を開いたが、その前に走り去った。
目の前に広がるのは青い魔法陣、ゴールは近い。
私は、転がるようにワープの中へ飛び込んだ。
ドサッと音を立てて倒れたのは、落ち葉の上ではなく、見慣れた床の上。
そして、上を見上げれば驚いたように目を見開くトッティ。
トド松「どどど、どうしたの!? や、やっぱ怒られた!?」
目を白黒させるトッティを見たら、急に涙が出てくる。
あぁ、私は馬鹿だった。
純粋で素直で天使だったのは、目の前の人で、今まで信じてた人は悪魔だ。
天使のふりをした悪魔。
しかも、私達の付き合いを祝福してくれた妹だって、悪魔。
「と、と、トッティー!!!」
抱きつけば、トッティは大人しく抱きしめてくれる。
あぁ、もうどうにでもなればいいや。
私の村は貧乏だった。
だからこそ、お金がなくて隣の家の妹みたいに可愛がってた女の子は、余命一ヶ月だった。
だから、お金が必要で、だから稼げる私は稼ぎまくった。
本当は、休みの日には実家へ帰って弟に会いたかった。
それも、全てお金を稼ぐために使った。
――そしたら、どうだろう?
私の頑張りは全て無駄に終わったんだ。