第2章 ハルハウララ
「これは、あの、どういう…」
「いきなり言われても、という感じですね…きちんと説明しますね」
武田先生は少し困ったように笑ってから、再び口を開いた。
「小夜さんに学校へ通ってほしいというのは、実は田中くんが僕に相談してくれたことなんです」
「え?」
田中さんが?どういうことなんだろう。
「勉強ができるしけして嫌いじゃない、そしてとてもいい子なのに、病気で昼間の学校へ行けない友達がいる、何かできることはないか一緒に考えてほしい…と」
「お母さんも田中さんからその話を聞いてね、武田先生と校長先生とお話させていただいたの。校長先生、お母さんが烏野生だったときからの知り合いだから…」
私がふわふわと日々を過ごしている間に、水面下ではそんなことが起こっていたんだ。全く気が付かなかった。
「この間家でテストを解いてもらったでしょう?あれが県の高校入試の試験問題だったんだけど、得点が烏野の合格ラインを越えていたから、特別に夜に通っていいことになったの。武田先生を通して、国語系以外の科目も他の先生に教えて頂けるよ」
「…」
「バレー部のマネージャーも、補佐としてしてもいいって、マネージャーの清水さんから言って頂けたの」
「…」
「小夜?」
この短時間に色々な情報が頭の中に流れ込んできてしまって、何も言うことができなかった。
「勝手に話を進めてしまってごめんね。けど選ぶのは小夜だから、あなたの思うようにしたらいいと、お母さんは思うな」
「こんな…」
「ちょ、小夜!何も泣くことねーだろ!」
自分でも気づかないうちに涙がぱたぱたと床に落ちてゆくのを、慌てて飛び出してきた田中さんに拭われる。
こんなに良くしてもらえて、学校に行きたいって夢も叶えてもらえて、私は…
私は、なんて幸せ者なのだろう…―
「っく…田中さん、大丈夫、です」
「そ、そうか?」
涙を自分できゅっと拭い、お母さんと武田先生の方を見る。
「ありがとうございます…たくさん迷惑をかけてしまうかもしれませんが、どうかよろしくお願いします…!」
それからバレー部の皆さんの方へ向き直る。
「朝比奈小夜です、一生懸命頑張ります…よろしくお願いします…!」
瞬間、体育館内に、わっと歓声が沸いた。